「消防署から、避難器具を設置してくださいと言われました。」
ある飲食店のオーナー様から、このようなご相談をいただきました。
店舗はすでに営業中でしたが、消防署の立入検査で、2階部分の収容人員などから避難器具の設置が必要との指摘を受けたそうです。
そこで、建物の図面を確認し、現地調査を行いました。
法令上、避難器具は必要な建物でした。

現地を確認した結果、建物の用途や収容人員などから判断すると、避難器具が必要となる条件に該当していました。
ここまでは、消防法に基づく一般的な判断です。
しかし、実際に設置しようとすると、大きな問題がありました。
避難器具を設置したくても、降下できない障害物が…..。
建物は三方を隣接建物に囲まれており、安全に降下できるスペースが確保できるのは正面だけでした。
ところが、その正面には1階入口の大きなひさしが設置されており、避難器具を使用した際の降下障害となる状態でした。
消防署とも協議した結果、このままでは設置基準を満たすことができませんでした。
想像以上の改修が必要に….。
最終的には、
- ひさしの一部を撤去する工事
- 避難器具の操作空間を確保するため、2階客席の一部を撤去する工事
が必要という結論になりました。
つまり、避難器具本体の設置費用だけではなく、建物の改修や客席レイアウトの変更まで必要となり、想像以上の時間と費用がかかる結果となったのです。
新築と中古物件では大きな違いがあります。
新築建物では、建築確認申請の段階で消防署の同意が行われるため、このような問題は計画段階で確認されます。
一方、中古店舗を借りて開業する場合は、契約後や工事後になって初めて消防法上の課題が見つかることも少なくありません。
その結果、今回のように大きな改修が必要になるケースがあります。
「借りる前」の相談がコストを抑えるポイント
私は元消防士として消防行政を経験し、現在は消防設備士・行政書士として多くの現場に携わっています。
その経験からお伝えしたいのは、
消防法の確認は、工事の前ではなく、物件を借りる前に行うことが最も重要だということです。
事前に確認していれば、
- 必要な消防設備
- 建物の問題点
- 想定される改修工事
を把握でき、結果として余分な工事や費用を抑えられる可能性があります。
まとめ
消防法は、「設備を設置すれば終わり」というものではありません。
建物の構造や避難経路、周囲の状況なども含めて、安全に使用できることが求められます。
中古店舗やテナントを借りて開業を予定されている方は、契約後ではなく、契約前・工事前に一度ご相談ください。
その一歩が、大きなコストと時間の削減につながることがあります。
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