避難訓練は、「子供だけの訓練」になっていませんか?

東京都北区の小学校で発生した火災を受け、文部科学省は令和8年6月26日、全国の学校に対し、防火防災に係る安全点検や避難訓練の実効性確保を求める通知を出しました。

通知では、消防用設備等の点検、防火シャッターや防火用扉、消火栓、避難器具の確認、そして教職員を含めた自動火災報知設備作動時の初動対応、消火器・消火栓・救助袋等の設置場所や使用方法の確認が重要とされています。

今回、特に考えたいのは、避難訓練の「質」です。


子供たちは訓練の成果を発揮していた。

報道によると、この学校では月に1回、避難訓練が実施されていたとされています。

子どもたちは、「おさない・かけない・しゃべらない・もどらない」という、いわゆる「おかしも」の考え方に沿って、落ち着いて避難行動を取っていたようです。

これは、日頃の避難訓練の成果が表れていたと言ってよいでしょう。

避難訓練を繰り返すことで、子どもたちが慌てず行動できるようになる。

この点は、とても大切です。

では、大人はどうだったのか?

一方で、私たちが考えなければならないのは、子どもたちを守る立場にある大人、つまり教職員や施設職員の対応です。

火災時には、単に避難誘導をするだけではありません。

初期消火、通報、避難経路の判断、消防用設備の活用など、状況に応じた判断と行動が求められます。

例えば、次のような点です。

  • 消火器を使った初期消火ができるか
  • 屋内消火栓が設置されている場合、その使い方を知っているか
  • 防火戸や防火シャッターが閉まったとき、くぐり戸の存在を知っているか
  • 救助袋などの避難器具の設置場所と使用方法を知っているか

消防用設備は、建物に設置されているだけでは十分ではありません。

緊急時に使えなければ、本来の役割を果たすことができません。

「避難訓練」と「消防用設備の操作訓練」は別に考える必要がある。

多くの施設では、避難訓練は実施されています。

しかし、その内容が「非常ベルが鳴ったら外へ避難する」という流れだけになっていないでしょうか。

もちろん、避難行動を身につける訓練は重要です。

しかし、それだけでは実際の火災対応としては不十分な場合があります。

本来は、通常の避難訓練とは別に、

  • 消火器の使用訓練
  • 屋内消火栓の放水訓練
  • 防火戸や防火シャッターの確認
  • 救助袋など避難器具の使用方法の確認
  • 自動火災報知設備が作動した際の初動対応

といった、消防用設備を理解し、実際に使えるようにする訓練が必要です。

こうした訓練は、専門の業者や消防設備に詳しい専門家を招いて実施することも有効です。

福祉施設でも同じ課題がある

私は福祉施設などで避難訓練を支援する中で、同じような課題を感じることがあります。

それは、職員の方が消防用設備の存在を十分に把握していないケースがあるということです。

「消火器はどこにありますか」
「屋内消火栓は使えますか」
「防火戸が閉まった場合、どこを通りますか」

このように確認すると、すぐに答えられないこともあります。

ましてや、実際の火災時に落ち着いて使うとなると、日頃から訓練していなければ簡単ではありません。

外国人職員への周知も重要な課題

近年、福祉施設や介護施設、保育施設などでは、外国人職員の方が働いていることも珍しくありません。

日常業務では最低限の日本語で支障がなくても、火災時に使われる言葉や消防用設備の名称、操作方法まで理解できているかは別の問題です。

例えば、

  • 火災報知設備
  • 屋内消火栓
  • 防火戸
  • 防火シャッター
  • 救助袋
  • 避難経路

こうした言葉や設備の意味を、職員全員が共有できているでしょうか。

緊急時は、長い説明をしている時間はありません。

だからこそ、普段から「見て分かる」「触って分かる」「一緒に確認する」訓練が必要です。

訓練は「実施した」ではなく「使えるようになったか」

避難訓練の目的は、実施記録を残すことではありません。

本当に大切なのは、火災が発生したときに、

  • 誰が通報するのか
  • 誰が初期消火を行うのか
  • 誰が避難誘導を行うのか
  • どの設備を使うのか
  • 使えない場合はどうするのか

を、職員が具体的に理解していることです。

「訓練をしました」で終わるのではなく、

「実際に対応できる状態になったか」

という視点で見直すことが重要です。

まとめ

避難訓練は、子どもや利用者だけのための訓練ではありません。

むしろ、命を守る立場にある大人が、消防用設備を理解し、初期対応を身につけるための訓練でもあります。

消防用設備は、設置されているだけでは意味がありません。

使えること。

知っていること。

判断できること。

これが本当の備えです。

セーフティデザイン防災行政書士事務所では、消防士・消防設備士・行政書士としての経験を活かし、学校、福祉施設、介護施設、保育施設などの実情に合わせた避難訓練や消防用設備の確認、安全管理体制づくりを支援しています。

「避難訓練をしているけれど、本当に実効性があるのか不安」

そのような場合は、一度、訓練内容や消防用設備の確認方法を見直してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

元消防職員、消防設備士、行政書士としての経験を生かし、「安全を設計する」を理念に消防申請、防火管理、設備相談、福祉施設の安全支援まで一貫してサポートしています。

Safety Design 防災行政書士事務所 代表

青木防災株式会社 顧問

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