福祉施設の消防訓練、本当にそれでよいですか?

福祉施設では、消防法令に基づき定期的な消防訓練が実施されています。

私自身も、老人保健施設などの夜間想定訓練に携わる機会があります。

訓練を実施するたびに感じることがあります。

それは、

「訓練が避難することだけを目的にしていないだろうか」

ということです。

夜間の福祉施設では、少ない職員数で多くの利用者を支援しなければなりません。

訓練では、一人の利用者を屋外へ誘導し、職員が戻って次の利用者を誘導するという方法が行われることがあります。

しかし、実際の火災時にそれが可能でしょうか。

利用者の中には、歩行が困難な方や認知症の方もおられます。

屋外へ避難した後の安全確保はどうするのか。

寒い冬や暑い夏の場合はどうするのか。

夜間に職員が数名しかいない状況で、本当に全員を屋外へ避難させることが最善なのでしょうか。

私は訓練の中で、

「課題検討型訓練」

という考え方を取り入れています。

避難誘導訓練を実施した後、職員が会議室などに集まり、

  • どのような問題が発生したか
  • どのような対応が現実的か
  • 施設の構造上の特性はどうか

を皆で検討します。

訓練は実施して終わりではありません。

訓練から課題を見つけ、改善につなげることが重要です。


老人保健施設などの施設は、多くの場合、耐火構造で建築されています。

また、自動火災報知設備やスプリンクラー設備などの消防用設備も整備されています。

さらに、消防隊は通報を受ければ短時間で現場に到着します。

そのような状況を考えると、

必ずしも全員を屋外へ避難させることだけが正解ではない場合があります。

施設の構造によっては、

隣接区画への水平避難

防火区画を活用した避難

あるいは居室内待機

といった選択肢も考えられます。


もちろん、施設の構造や火災の状況によって対応は異なります。

しかし重要なのは、

「訓練のための訓練」

にならないことです。

利用者の状態、施設の構造、夜間の職員体制を踏まえ、

本当に実施可能な避難方法は何かを考えることが必要です。

消防訓練の目的は、避難経路を覚えることだけではありません。

火災時に利用者の命を守るために、職員が考え、判断し、行動できるようになることです。

そのためには、避難誘導訓練とあわせて、

「課題を発見し、皆で考える訓練」

が必要ではないでしょうか。

福祉施設の安全管理において、私はこれからもそのような視点を大切にしていきたいと思います。

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