12条点検でよくある指摘事項10選

建物管理者が知っておきたい改善ポイントを解説

「12条点検で指摘を受けました」と言われても、何をすればいいのでしょうか?

建築基準法第12条点検の結果、「不適合があります」「改善してください」と言われ、不安になった経験はありませんか。

実際にご相談いただく内容でも、

  • 「どこを直せばいいの?」
  • 「すぐに改修しなければならない?」
  • 「消防設備点検では問題なかったのに、なぜ指摘されたの?」

という声をよく耳にします。

建築基準法第12条点検は、建物を安全に利用するために欠かせない法定検査です。

しかし、指摘事項の多くは、建物が古いから発生するわけではありません。

日頃の点検や維持管理を少し意識するだけで防げるものも数多くあります。

この記事では、私が建築設備検査員として現場でよく見かける指摘事項を10項目にまとめ、その原因や改善方法、普段からできる予防策まで詳しく解説します。

① 非常用照明設備が点灯しない

12条点検で最も多い指摘事項の一つが、非常用照明設備の不具合です。

非常用照明設備は、停電時に避難経路を照らすための設備です。火災だけでなく、地震や停電などで通常の照明が消えた場合にも、人々が安全に避難できるよう設置されています。

ところが、普段点灯している照明でも、停電時に切り替わるバッテリーが劣化していると、いざという時に点灯しません。

主な原因

  • 内蔵バッテリーの寿命
  • ランプの故障
  • 点検不足
  • 長期間交換していない

放置するとどうなる?

停電時に避難経路が真っ暗になり、避難が遅れたり転倒事故につながる危険があります。日常管理のポイント

非常用照明設備は「普段点いているから大丈夫」と判断しないことが大切です。

定期点検だけでなく、更新時期を把握し、バッテリーの交換時期を管理しておきましょう。

② 防火戸が正常に閉鎖しない

防火戸は、火災時に煙や炎の広がりを防ぐための重要な設備です。

しかし、現場では意外なほど多くの建物で正常に閉鎖できない状態が見つかります。

主な原因

  • ドアストッパーで固定している
  • 荷物や家具が閉鎖を妨げている
  • 建付け不良
  • 閉鎖装置の故障
  • 定期的な点検不足

特に福祉施設や事務所では、「普段使いにくいから」という理由でストッパーを使用しているケースを見かけます。

放置するとどうなる?

火災時、防火戸が閉まらなければ煙が一気に広がります。

煙は炎よりも早く建物内へ拡散し、避難を困難にする原因になります。

日常管理のポイント

防火戸の前には荷物を置かず、ストッパーなどで固定しないよう徹底しましょう。

また、防火戸は毎日使用する設備だからこそ、「開閉に違和感がないか」を日常点検の項目に加えることをおすすめします。

③ 防火シャッターの降下障害

建築設備検査で非常によく見かけるのが、防火シャッターの下に物が置かれているケースです。

火災時には防火シャッターが自動的に降下して、防火区画を形成します。

しかし、その下に商品や棚、荷物、自転車などが置かれていると、最後まで閉まりません。

主な原因

  • 物品の仮置き
  • 段ボール箱等の放置
  • 観葉植物などを置いている
  • いつの間にか自転車置き場に代わっている。などなど

放置するとどうなる?

防火区画が形成されず、火災や煙が建物全体へ広がる可能性があります。

さらに、防火シャッターが障害物に接触すると設備が故障する原因にもなります。

日常管理のポイント

防火シャッターの下は「空けておく場所」であり、「保管場所」ではありません。

床にラインを引いたり、「物を置かないでください」と表示するだけでも改善につながります。

④ 排煙設備が正常に作動しない

火災で命を奪う最大の要因は、炎よりも煙と言われています。

その煙を建物の外へ排出する役割を担うのが排煙設備です。

ところが、点検では排煙窓が開かない、排煙機が作動しないという事例も少なくありません。

主な原因

  • ワイヤー切れ
  • モーターの故障
  • 開閉装置の不良
  • 長年使用していないことによる固着

放置するとどうなる?

煙が建物内に充満すると、避難経路が見えなくなり、短時間で避難が困難になります。

日常管理のポイント

排煙設備は普段使用しないため、故障に気付きにくい設備です。

法定点検だけでなく、設備更新の際には作動確認もあわせて実施しましょう。

⑤ 換気設備の不具合

換気設備も建築設備定期検査の重要な対象です。

特に地下階や窓の少ない建物では、正常な換気が行われていることが安全確保につながります。

主な原因

  • 換気ファンの故障
  • フィルターの目詰まり
  • ベルト切れ
  • モーターの老朽化

設備自体は設置されていても、十分な性能を発揮できていないケースがあります。

放置するとどうなる?

室内環境が悪化するだけでなく、火災時の煙の流れにも影響を与えることがあります。

建物利用者の健康や安全の面でも、適切な維持管理が必要です。

日常管理のポイント

フィルター清掃や定期的なメンテナンスを実施し、異音や風量の低下など、普段との違いに気付ける体制を整えておきましょう。

⑥ 防火区画の貫通部処理がされていない

建物では、電気配線や配管、通信ケーブルなどを壁や床に貫通させる工事が頻繁に行われます。

しかし、その際に防火区画の穴を適切に塞いでいないことが、12条点検で指摘されるケースが少なくありません。

建築基準法では、防火区画を貫通する配管や配線には、防火性能を維持するための処理(区画貫通処理)が求められています。

ところが、設備工事や改修工事のあとに確認されず、そのままになっていることがあります。

主な原因

  • エアコン工事後の未処理
  • LANケーブル増設工事
  • 電気工事後の隙間
  • 配管更新後の復旧不足

放置するとどうなる?

火災時に煙や炎が壁や床を通じて短時間で他の区画へ広がるおそれがあります。

防火区画は建物内で火災の拡大を遅らせるための重要な仕組みです。

小さな隙間でも、安全性を大きく損なう原因となります

常管理のポイント

設備工事を行った際は、「工事が終わったか」だけではなく、「防火区画が元どおり復旧されているか」まで確認することが大切です。

⑦ 非常用照明設備のバッテリー性能が不足している

「点灯しない」ケースを紹介しましたが、点灯していても不適合となる場合があります。

それが点灯時間不足です。

非常用照明設備は、一定時間以上点灯し続ける性能が求められています。

しかし、長年使用したバッテリーでは、点灯しても数分で消えてしまうことがあります。

主な原因

  • バッテリーの経年劣化
  • 更新時期の見落とし
  • 定期交換をしていない

放置するとどうなる?

避難途中で照明が消え、建物内が暗くなれば、安全な避難が困難になります。

日常管理のポイント

照明器具本体だけでなく、バッテリーにも寿命があります。

メーカー推奨の交換時期を把握し、計画的に更新することが重要です。

⑧ 防火設備と煙感知器が連動していない

防火戸や防火シャッターは、人が閉める設備ではありません。

多くは煙感知器が火災を感知すると、自動で閉鎖する仕組みになっています。

ところが、

  • 煙感知器は反応した
  • しかし防火戸は閉まらない

というケースが見つかることがあります。

主な原因

  • 連動制御盤の故障
  • 連動制御盤の故障
  • 配線の断線
  • 改修工事後の設定ミス
  • 長期間作動確認をしていない

放置するとどうなる?

火災時に防火設備が機能せず、煙や炎が建物内へ急速に広がる危険があります。

日常管理のポイント

防火設備は「見た目」だけでは正常かどうか判断できません。

定期的な作動確認を実施し、連動機能まで確認することが重要です。

⑨ 点検口が物で塞がれている

設備点検に伺うと、

「点検口が見つからない。」

ということがあります。

実際には、

  • 書庫
  • ロッカー
  • コピー機
  • 商品棚

などで完全に塞がれているケースがあります。

主な原因

  • レイアウト変更
  • 収納スペース不足

日常管理のポイント

点検口の周囲には十分な作業スペースを確保し、物を置かないルールを決めておきましょう。

⑩ 維持管理記録が残っていない

最後は設備そのものではありません。

維持管理体制です。

点検結果や修繕履歴が記録されていない建物では、

  • いつ修理したのか
  • どこを交換したのか
  • 次回交換時期

が分からなくなります。

主な原因

  • 担当者交代や退職、異動など
  • 記録の紛失
  • そもそも記録を保存しようという意識がない

放置するとどうなる?

同じ不具合を繰り返したり、必要な修繕時期を逃す原因になります。

日常管理のポイント

点検報告書だけでなく、

  • 修繕記録
  • 写真
  • 更新履歴

も一緒に保管すると、長期的な維持管理がしやすくなります。

元消防士・建築設備検査員としてお伝えしたいこと

私は消防士として火災現場や立入検査に携わり、その後、消防設備士、建築設備検査員、防火設備検査員として数多くの建物を見てきました。

その経験から強く感じることがあります。

指摘事項が少ない建物には、共通点があります。

それは、高価な設備があることではありません。

管理者や職員が日頃から建物に関心を持ち、「少しおかしいな」と感じたことを放置しない文化があることです。

逆に、多くの指摘を受ける建物では、「設備は業者に任せているから大丈夫」という意識が見られることがあります。

もちろん専門的な点検は資格者が行いますが、日常の小さな気付きは、建物を利用する皆さんにしか分かりません。

建物の安全は、一度の点検で守られるものではなく、日々の維持管理の積み重ねによって支えられています。

まとめ

建築基準法第12条点検で指摘される事項は、多くの場合、突然発生した故障ではありません。

日頃の維持管理や簡単な点検を続けることで、防げるケースが数多くあります。

今回ご紹介した10項目を参考に、ぜひ一度、ご自身の建物を見直してみてください。

早めに不具合へ気付き、改善することが、建物利用者の安全につながります。

よくある質問(Q&A)

12条点検で指摘を受けたら、すぐに改修しなければいけませんか?

指摘内容によって対応の優先度は異なります。重大な安全上の問題は早急な改善が望まれますが、まずは点検を実施した資格者や専門家へ内容を確認し、計画的に対応することが大切です。

指摘事項は自分で直せますか?

清掃や物品の移動など管理上の問題は対応できる場合がありますが、防火設備や建築設備の修繕は専門業者による対応が必要なケースが多くあります。

消防設備点検で問題がなければ、12条点検も大丈夫ですか?

いいえ。消防設備点検と12条点検は対象設備や根拠法令が異なります。それぞれ別の観点から建物の安全性を確認するため、両方を適切に実施することが重要です。

建築基準法第12条点検でお困りの方へ

建築基準法第12条点検で指摘を受けても、原因を正しく把握し、適切に対応すれば改善できるケースがほとんどです。

「通知が届いたけれど、何から始めればよいか分からない。」
「改善方法や優先順位について相談したい。」
「消防設備点検との違いも含めて説明してほしい。」

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

Safety Design (セーフティデザイン)防災行政書士事務所では、

  • 特定建築物定期調査
  • 建築設備定期検査
  • 防火設備定期検査
  • 指摘事項への改善アドバイス
  • 消防設備点検との違いのご相談

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